やっと暖かくてなってきたと思って空を見上げると、空は想像以上に高かった。
どうやら世界は梅雨を通り越し、夏を飛び越えて秋になってしまったようだ。浮かぶ雲はどう見ても鱗だし、陽の温もりの間を縫うように吹き抜ける風は少し冷ややかで、とても爽やかだ。
私は夏がそれほど好きではない。というか、むしろ嫌いかもしれない。絡みつく湿気と、頭をボウっとさせる熱気は緩やかな拷問なのかと疑ってしまう。
そう考えると、不意に訪れたこの秋の空を、私は歓迎すべきだ。ああ、嬉しいな。
お昼休みに車の中で本を読む。米澤穂信さんの『太刀洗万智シリーズ』。余計な装飾がなく、かといって情景を想像させるには十分な表現。過不足ない、洗練されたプロの文章は、なんと心地よいことか。
額に汗を感じる。
もう、春ではないんだと思い、そう思ったらやっぱり海に行きたくなったな。
なんにも考えず、海に揺られたいと思う。
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