日々のこと音楽

闇の中で物思いにふける

昨日見た『竜とそばかすの姫』。十数年ぶりの映画でかなりの刺激を受けてしまったので、感想なんかを書いてみます。

物語の舞台は四国の高知県。そしてインターネット上の仮想世界U(ユー)という、現実と虚構を行き来しながら展開していく。現実世界はリアルに描かれていて、仮想世界はアニメーションの特性を存分に発揮した夢のような世界。主人公すず(=Belle)の歌が物語の重要なものとなっていて、キャラクター設定なんかはディズニーだったり、石ノ森章太郎の世界観だったり、結構、過去のアニメ作品のオマージュ的な要素がある。ミュージカル要素は、やっぱりディズニーなのかなあ。登場人物はいかにも身近にいそうな感じだけど、物語を通してみると、彼らはどちらかというと物語を進めるための舞台装置であるとの印象受けました。リアルな視点で見るというよりは、やっぱりリアルの背景を借りた舞台演出のファンタジーなのかな。

仮想世界を取りいれていることは、今のSNSの流行を受けたものではあるけれど、仮想世界というある意味精神世界を描くことで、登場人物の心理描写を強調したかったように感じました。登場人物のセリフにはSNS批判ともとれる言動もあり、表面的に見れば、SNSを利用している人たちへの警告的な意味合いもないわけではないと思いますが、それは味付け程度なのかも。最終的にすずが歌をとりもどすクライマックスから、たぶん、精神世界の体験を通して自己を取り戻すという、ある意味、普遍的(古典的)なお話だったのかなーと思いました。

少し前に、ネットフリックスでアメリカのアニメ『ミッドナイトゴスペル』を見ていましたが、アバターの設定なんかは結構似ている。あっちは完全に精神世界についてのインタビュー・ドキュメンタリーでしたけど。仮想世界という制約のない状況を作るということを、この『竜そば』でもやりたかったのだと思う。だぶん。細田守監督作品を見るのは初めてなので、これってもしかしたら作風なのかな?

話を『竜そば』に戻します。

物語は、暗い過去を持つ主人公が仮想世界でバズってスターになるというベタなストーリーではあるけれど、たぶん、これも映画の型として演出なのかもしれない。地味な中年のおじさんが、地味にSNSを使って、地味に自分を取り戻すというストーリーでも物語は成り立つのではないのかなーと思うが、それじゃあみんな見ないよね。おじさんの私は見るかもしれないけど。。。多くの人は、SNSをやってもバズらないし、スターにもなれないけど、SNSを通して経験することって、だいたい同じような道を辿ると思う。SNSはあくまで虚構、仮の世界であって、現実世界にしか本当の生きる場所は無い。暗い過去というものも、その濃淡はあるけど、誰もが抱えているもの。『竜そば』の華やかな仮想世界と四国の素朴でリアルな世界の対比は、とても地味で目立たない私たちの現実世界におけるインターネット上の世界とリアルの世界についてのコントラストを際立たせるための表現・手段だったのではないだろうか。分かりにくくはしてるけど、多くの人の共感を得るために作り込まれている。そういう意味でも、この作品は現代の古典を目指しているような気がする。

そんなことを考えつつ、個人的には思春期のすずとお父さんの微妙なやりとり、高校生活での人間関係のもつれ、ちょっとした恋のエピソードなんかが挟まれたりしていて、なんだか懐かしいような、羨ましいような気持ちになれたのが良かった。登場人物で言えば、私はもう完全にすずのお父さん(声:役所広司)視点でしか見れなかったけど。

先日高知の友人からカツオのたたきをいただいたが、その友人に福島から送った桃が届いた当日にこの映画を見ることができたというのが、なんだか絶妙なタイミングで嬉しかった。こんな形でこの映画に出会えたという事実が一番心に残った。舞台が『いの町』なんて、なんだか出来過ぎてるよね。

常田大希 さんたちのグループ「 millennium parade 」が作る曲、 中村佳穂さんの歌、そして『U』映像美を含めた作品の世界観が素晴らしかった。

いつの日か、また見てみたいと思える作品でした。

4+

闇の中で物思いにふける” への2件のフィードバック

  1. 初細田が竜そばとは!!
    旧作ではサマーウォーズと狼子どもが特にオススメで、今ならアマプラで全作無料だから、check it out, yo!
    時かけも外せないけどー

    1+
    1. そうなの、初細田。
      サマーウォーズは見たいと思っていたけど、完全にタイミングを逸していたわ。
      旧作、この夏に見る!

      1+

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